トリオ 通信型受信機 9R-42Jの修理

不具合事項
出力音量が小さい
・ Sメーターが動作しない(信号受信時メーターの増減の振れが無い)
・ 真空管V6のプレート電圧(7)6.5Vに対し4.4Vと低い
・ 真空管V7のグリッド電圧(6)8Vに対し6.5Vと低い
・ コイルパックの殆どの箇所で絶縁状況を図るとアースに落ちている感あり?
(ただコイルの抵抗値が低いために抵抗値を示さないのかな?とも思ったりしています)
・ 本体へのSP端子プラグが無いため、本体SP端子ジャックNo.1と5を背面外側でつなぎ、
またSPは本体SP端子ジャック内側No.3と4のコンデンサの両端から鰐口クリップで接続していました
・ 6.5Vの豆球がアース ショートし、これによりガラス管ヒューズがとんだため125V・1A(電流が不明のため1Aとした)
及び豆球をそれぞれ取替える。

9R42Jにおける今までの修理箇所及び点検結果
・ Sメーターが振り切れV1回路のR4、15KΩが不良であったため取替え済み
・ そのほか不良と思われる数箇所のR及びCを取替え済みです
・ 真空管、6BD6・6BE6・6AV6の3本を適宜取り替えたが変化なし
 



修理に来た時のシャーシ内部です。
確かにSメーターが固定位置を指すだけで 動きません。
真空管は6BD6 6BE6 6BE6 6BD6 6BD6 6AV6 6AR5 5Y3の9球です。
TV−10(真空管試験器)で調べてみると 5Y3以外は大丈夫のようです。
整流管の5Y3は完全なエミゲンです。
白丸内の部品は不都合があった部分。

このような時はまず低周波段から調査します、まず6AR5のグリッドに信号をいれスピーカーから音が出ることを確認します。
順次調べてゆくと、とんでもないことが見つかりました。
IFT検波回路の配線が間違っているのです。
白い線で囲った黄色の配線が該当部分です。
この配線はIFTの検波回路で、6AV6の2極管のプレートに接続すべきなのですが、アースに落ちているのです。
回路図で見ると IFT3の端子1に相当する部分です。
これでは正常に 音が出るはずが有りません。
元々 このラジオは依頼者が組み立てて BCLに使っていたとのこと、5Y3などは消耗しきっていることと合わせ、腑に落ちないことだらけでした。
その後 別人が使っていたそうなので その時改造されたのかもしれません。




下図のように配線を修正して 音が出るようになりました。



ただ この時点では音が出るだけで、不思議な雑音が出ます。
それも振動を加えると変化するのです、いろいろ調べてみると6AV6のグリッド回路のコンデンサーと抵抗の半田つけ不良でした。
所謂 イモ半田と称する状態でした。
組み立て時点の半田つけ不良のためかもしれません。
この現象は場所を見つけるのが大変なので 全ての個所の半田つけをやり直した方が早いかもしれません。
表面的には半田つけされているのですが、半田面が薄く浮き上がり、接触面に絶縁物が形成されて 時々雑音が出るようになり、
最終的には通電しなくなるようです。 


これでSメーターが動くようになりましたが、振れが弱いのです。
調べてゆくとAVC回路のコンデンサーのリークが原因でした。怪しいコンデンサーを全て交換し、調整です。
なお整流管は依然アメリカから輸入した5V4Gの手持ちが有りますので、これを使うことにしました。
5Y3は直熱管なのでSメーターがスイッチオン時振り切れるなどの嫌らしい現象が有りますが、
5V4Gは傍熱管なので そのような副作用は有りません。
(5V4GはST管の83Vと同規格の球です)
ただ効率が良すぎるので整流後の電圧が高くなるきらいがあります。
この為 整流回路のAC側に抵抗を挿入して B電圧の高くなりすぎを防止しています。





5V4Gは高効率の整流管なので、5Y3に比べB電圧が高くなります、この為入力側に抵抗をいれ、この防止をしています。
5Y3のプレートピンの隣は空きなので、このような場合便利です。



6AR5のプレート回路の0.005μFは小型のものが使われていたが 耐圧上危険なので 交換した。



この種の受信機は調整が命です。
まずIFTを455KHzに合わせ、BFOも合わせます。
このラジオのBFOは470KHzになっていたので最初はビートが聞こえず、発振していないのかと疑いましたが・・。
オシロスコープで発振を確認し 調整しました。

次に 各バンドの目盛を合わせます。
この時バンドスプレッド目盛は0の位置(バリコンが最も抜けた)にします。
A B C Dバンドそれぞれを目盛合わせとトラッキング調整を行います。
調整終了後は白ペンキでネジを固定して終わりにします。
A B C各バンドとも0dBの信号が確認できます、結構高感度です。
ただしDバンドの感度は相当低いようです。
真空管受信機の宿命かもしれません。




9R−4J(9R-42J)回路図

9R−4Jと42Jの違いは2セクションバリコンの使用の有無です。
9R−42Jははハムバンド主体ですから、短波帯はバリコンの 2セクションのうちの半分しか使いません。
同調は楽ですが、この為 1.6〜3.5MHzは受信できません。

この回路図は切替が有りませんので、9R−4Jのものです。





バリコンはそれぞれのセクションが2つに分割されている。



2013年4月20日
2013年4月23日:320






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