ナショナル BX−290真空管ラジオの修理

ナショナルの超高級ラジオが修理にやってきました。

通電したら 受信できるので数時間聴取したら無音になったとのこと。
6D6 6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80BK 6E5の構成です。

まずケミコンテスターで漏洩電流の試験をしました。
ケミコンの漏洩電流が凄く多いです、とても使えません。

次に42のグリッド電圧を測定してみました。
入力インピーダンスの高いデジタルテスターで測定してみました。
14.27Vです。

下側の図は6ZDH3Aのプレート電圧です。
184.9Vです。
ケミコンの漏洩電流が大きいので 良品なら300Vくらいあっても良い値ですが。
正常時の動作電圧は90Vくらいと思われるので、これから計算すると、

42に14.27Vの半分くらいの逆バイアスがかかっていたことになります。
これでは 出力管42に過大電流が流れ 持ちません。
整流管や出力管が過電流で壊れるか、電源トランスが焼けるか、出力トランスが断線するかのどちらかです。
結果的に出力トランスが断線していました。 なお本件に関してはもう一つ大きな副作用が残っていました、これは後刻報告。







出力トランスを調べて見ると見事断線です。

真空管はTV−10で確認すると、マジックアイを除いて使えそうでした。
(最後はこれで泣かされたがーーー 最後に報告)

ただ6D6の1本グリッドがぐらぐらなので、エポキシで接着した。

ナショナル BX−290回路図



ダイアルの糸がほつれてうまく動きません、ダイアルの糸かけを行います。



新品の6E5を組み込んで試験



試験中 不思議な現象に出くわした。
これまで1,000台以上のラジオを修理してきたが 初めての経験でした。
受信中 だんだん音が小さくなり10秒くらいで聞こえなくなったのです。
非常に驚きました。

原因は抵抗の断線でした。
断線した抵抗は数多く交換してきましたが、受信中に音が小さくなるのには驚きました。
最初は何が起きたか想像すらできなかったのですが、6ZDH3Aのプレート電圧が出ないことにきがつきました。

抵抗を取り外してみると 裏側部分に変色が見つかりました。
どの位置かは このページ最初のシャーシ内画像をご覧ください。





出力トランスの交換

スピーカーを外さないとトランスは交換できません。
ところが1箇所だけ空回りして ネジが外れないのです。
スピーカーを外すのと組み立てるのに 合計3時間くらいかかってしまいました、いやはや。
なおこの位置には元のネジが使えないのでスピーカーのフレームに穴を開けて、木ネジで固定することにしました。



いろいろ工夫したのですが 駄目でした。
やむを得ず 前面からネじ(この場合マイナスネジが前面から差し込まれている。

前面パネルを外します、2枚組になっていて 全部でネジが30本も外さないと駄目でした。)
実は大き目の出力トランスの手持ちが無くて わざわざ秋葉原まで購入に出かけました、
この一連の作業で、トランスの交換は合わせて1日仕事になってしまいました。
なお今回のように負帰還をかけてある場合、配線は動作を確認しながらやらないとだめです。
トランスがオリジナルと違う方向にリード線が出ている可能性があり、見極めて配線する必要があります。
(引き出し線の方向は50%の確率で異なると考えたほうが良いでしょう)
数年前 数百台の修理経験のある方の修理品の後始末をしたことがりますが、この配線間違いでした。
元通り修復したと思い込んでいても違うことがあるので、要注意です。
皆さんご注意ください。




ここまで分解して 左側の布をめくり ネジの頭を出して、ねじ回しで固定後スピーカー側をナット回して取り外した。
(平頭の−ネジが埋め込んである、この部分が緩むと今回のようなことになる)



なおスピーカーの取り付けは前のネジが使えませんので、スピーカーのフレームに新しく穴あけし、
木ネジで固定しました。
なお トランスは東栄の出力トランスの大きい方を組み込みましたが、
これでも取り付け寸法が小さいのでスペーサーが必要です。
(昔のコアに比べ材質が良くなっているので トランスが少し小型になるとのこと)






修理後のシャーシ内部

平滑用ブロック型ケミコンは同じ規格のものが2本使われていました。
2本とも駄目ですが、1本のみ取り外し、その位置に450V 56μFのケミコンを組み込み、もう1本は配線を外したままにしました。
オリジナルは20 20 20 の組み合わせですが、今回は22 56 22μFとしました。


修理できて 通電してみると快適に受信できます。
ただ どうもカリ カリ という雑音が入るのです。
微かですが、どうも気になります、調べてみると42が原因らしいことがわかりました。

コイルの切れ掛かりの現象かとも思ったのですが、該当せず、最終的に真空管の不良を疑いました。
6D6から順次交換してゆくと 42を交換すると雑音が停止しました。

このラジオは無手入れ状態で数時間通電し、出力トランスを断線させていたので、42に無理がかかったのでしょう。
なおどのような雑音かは下記画像をクリックしてください。
音量を上げないと小さくて聞こえないでしょう。


この種 雑音が出る故障は真空管試験器では判別できません。

マジックアイを新品に



2017年7月26日
2017年8月3日:007







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真空管ラジオ


(2017年8月3日)BX−210 4860


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