ナショナル真空管ラジオ R-48の修理


昭和9年ころに製造されたと思われる ナショナルのラジオです。
岡部さんのラジオ博物館によると 昭和8年ころから発売されているようです。
外形を変えながら昭和14年ころまで製造されたとのこと。
ただ非常に不思議なラジオです。
配線図が貼付されているのですが、現物は明らかに違うのです。
回路図は整流管の+側出力にチョークのある普通の平滑回路ですが、現物は−側にチョークのある平滑回路が採用されているのです。
回路図では出力管のバイアスもヒラメント巻線の中点からバイアス抵抗が接続されています。
しかし 現物を見るとカソードはアースされています。
これは半固定バイアス方式で グリッドにマイナスのバイアスが加えられているのです。
この方式は殆ど知られていませんので 相当の経験者でも間違えやすいです。
大ベテランでも誤配線と誤解することもあるようで、ご注意ください。
拙著 「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」57〜58ページに半固定バイアスの詳細な説明がありますので御覧ください。

しかし この当時の回路図の書き方は見難いですね。



このラジオの設計は古いものらしく 松下の有名な当選号時代のラジオによく似ています。
トランス類も 横長の缶に収納する方式で 分解していないと中がどうなっているか解りません。
このような横長の缶タイプは昭和6〜7年ころに流行したようです。

とにかく 豪華な作りです、さぞ高価だったろうと思われます。
念のため 缶の上に内容物を書き出してみました。



修理 前のシャーシ内部。
以前修理しようとしたらしく 検波管のプレート負荷が抵抗に置き換えられています。
中央部分はペーパーコンデンサーです。
ペーパーコンデンサーの左側のnationalと書いてあるコンデンサーは高周波増幅管のカソードバイアス用で、
端子に見えるのは 缶の側面に300Ωの巻線抵抗が半田付けされ、その端子部分で ここに半田付けされています。
配線はここから224のカソードに伸びています。

しかし 昔のコンデンサーを残したまま修復するとは あきれてしまいます。



最初 現物を見て整流管のヒラメントと出力管のG2が直結されているのです、普通は平滑回路をでたところで接続されるはずなのに変だと感じました。
配線をよく見ても 途中で変更された様子はありません。
本体に添付されている回路図と同じと思っていたのですが 全く違う回路になっているのです。
ラジオの創世記 流行した半固定バイアスを採用した回路なのです。
この方式はコンデンサーの節約になるのか初期のラジオではアメリカでもよく利用されていました。



原回路がよく残っていると思われるので 丹念にトレースしてみました。
ただ大きな金属缶の中にトランスとチョークが組み込まれていて リード線しかありませんので 回路図が記載されている方の缶を開けてみました。
下記画像は缶を取り外したところです。




中には検波コイルと検波管の負荷に使うAFチョークが組み込まれていました。
チョークは断線したらしく 抵抗に置き換えられていました。
下記画像は缶の中身です、チョークはピッチ詰めされています。
左側の隙間に 検波コイルが入るわけです。



もう一つの缶は簡単には取り外せません、リード線が沢山引き出されています。
内部の接続も不明なので どのようになっているかは テスターやLCメーターで端子を測定して リード線の内容を判定してゆきます。
端子電圧 巻線抵抗値 インダクタンスの値などで推定してゆきます。
幸い 平滑用のチョークは活きていることが判りました、非常に珍しいです。

この切り分け作業が 非常に大変でした。
下記画像は分解途中です、少しずつ分解して 回路図を作成してゆきます。
中央上の 白い缶は平滑用のペーパーコンデンサーです。
容量は大きさから2〜3μFくらいでは。
もう1つの平滑用のコンデンサーは4端子の缶タイプコンデンサーのうちの2個を使っています。
こちらは容量は書いてありませんが4〜5μF位と推定されます。
残りの2端子はそれぞれ0.5〜1μF程度。



原回路を残し 一応修復が終わったところです。
これで通電して 動作を確かめます。



上記で 一応動作することは判りましたが 音量が小さいので、検波管のプレート負荷をチョーク方式に変更してみました。
効果抜群なので この部分はチョーク方式に戻すことにしました。
チョークは1:3のトランスを接続して 作成しました。
なお 接続方法はインダクタンスが高くなるように接続します、間違うとインダクタンスが極端に減少します ご注意ください。
LCメーターで測定しながらやると間違いありません。



 


最終的なシャーシ内部の姿です。
オリジナルの回路を忠実に再現しました。
ただ出力管のプレート回路と検波管のプレート回路のバイパスコンデンサ−は新たに追加しました。
また電解コンデンサーの容量はオリジナルの回路より 容量は増やしてあります。
X印の部品はオリジナル品が残っていますが 回路的には使われていません。
真ん中の缶入りペーパーコンデンサーも残したかったのですが、スペースの関係で取り外しました。
抵抗は オリジナルと思われるものが何とか使えそうなので そのまま使いました。
多少抵抗値は増加していますが 大きな影響は無いようです。

なおグリッドリークは使えないことはありませんでしたが 劣化が激しいのと 不安定なので交換しました。
検波管負荷の低周波チョークは抵抗結合に変更されていましたが、本来の姿の方が音量が大きくなるので 
オリジナル状態に戻しました。



シャーシ前面

受信してみると JOAKからJORFまで受信できます。
低い方は500KHz付近まで受信できますが、高い方は1422KHzのJORFがやっと受信できる程度です。
1500KHzまでは受信できませんでした。
グリッド側の配線にシールド線を使うなどの影響があるようです。
なお珍しいのは再生バリコンの回転表示指針が有ることです。
ダイアルの前面側の部分、このような表示は見た記憶がありません。




ACコードは秋葉原で黒の丸打ちコードを買って来ました。
ビニール線では風情が無いということで このようになりました。



動作試験中のナショナル Rー48

ツマミは残念ながらオリジナルではありません。
結構高感度で受信できます。




新品の部品は安全性を考えてありますが トランス類など古い部品は製造後80年は経過しています、
安全性は必ず劣化しています、十分注意して ご利用ください。


2015年6月19日







radiokobo-all

 
inserted by FC2 system