シャープ 4H−20のキャビネットを利用した自作ラジオの修理
(欠陥設計  自作ラジオの修理 高1で高周波増幅すると発振して受信できない)

シャープの真空管ラジオ 4H−20の修理を引き受けたのは良いのですが、送られてきたのは素人が一生懸命組み立てた自作ラジオでした。
音が段々 小さくなるという異常が起きるらしい。
もともとのキャビネットにシャーシから自作した mT管 高周波1段 陽極検波 低周波2段増幅の4球ラジオが組み込まれていました。
整流はシリコンで行っています。
オリジナルは6D6 6C6 6ZP1 12F グリッド検波 再生付きです。



シャーシを引き出したところです。

バリコンは最大容量が330PFくらいでした、ミズホのコイルと合致しそうです。


 

シャーシ内部です、検波コイルには再生巻線がありません。
素人が一生懸命組み立てたラジオです、非常に時間をかけたのではと思われます。
確かに ラジオは聞けるのですが 正常ではありません。
再生がないのに ピーギャーと発振するのです、それも高周波増幅のゲイン調整VRの広い範囲でおきます。
検波 低周波2段ですから そこそこ大きな音がしますが、なんとなく違和感があります。

発振するのでこれを止めようとしたのでしょうか 低周波増幅団のプレートが100PFの他に 332(3300PF)でバイパスされています。




再生がありませんが 感度VR(10KΩ A型)を左回りにすると音が大きくなります。
この回路にはA型を使ってはいけないのです、CまたはB型を使うべきですが 間違えたのかも、
その対策として反対方向に回せば音が大きくなるように配線したのかも入れません。
反対側に回せば 電気的には擬似C型のように見えます、不便ですが解決策です。
ただ残念なことに感度をほんの少し 上げると発振するのです、これは拙いし 異常でです。


さらに再生が無く 増幅段を増やしたので 音量調整用VRを追加したのでしょうが、
このVRのホットエンド(シールド線の赤い方の線)を追跡してゆくと なんと6BA6のソケットの中点(アース端子)が使われています。
検波管6AK5のプレートから次段の6BA6に配線する部分です。
この中央ピンはアースして 真空管内部のアース板と結合させる部分です。
初心者なのでちょうど良い具合に空き端子があると思ったのですが 驚きました。
このような使い方をするとハムが増えるのです。



mT管の中央ピンの使い方は拙著「真空管スーパーラジオ徹底ガイド」71ページに記載されています。
下記画像の中央 左側と中央
の画像を御覧ください。

6BA6のプレート回路と6AK6のグリッドの結合コンデンサーは0.047μFが使われているのですが、
6BA6のプレート回路に3300PFののコンデンサーでバイパスされているのです、
これでは高音がカットされて 音質が悪くなります。
多分 利得が多すぎて そのままでは発振するので 大きくしたのかもしれません。

整流はシリコンで 平滑回路をでたところで 210Vですから 常識的な値です。


いよいよ修理に着手しました。
まず回路図を作ります、素人が組み立てただけに想定外の値が使われています。

原回路図



どこかの回路図集から抜き出して 組みあわせたのでしょうが、これでは利得が多すぎて困るでしょう。

高周波と低周波の区別がつかない感じのコンデンサーの使い方です。
6BA6や6AK5は高周波用の球ですが、このラジオでは低周波に使われているので バイパスなど低周波を意識する必要があります。

上記の配線や部品を順次 最適と 思われる値に変更してゆきました。
中には200KΩの抵抗をパラに接続して100KΩとして利用しているものが有りました。
皆 新品ですから もったいないので 直列にして400KΩとして利用するなどしました。
下記まで配線して 検波以降は正常に動作するようになりました。

ただ大問題は高周波部分が電気的にどのように手を入れても発振するのです。
それも 尋常ではありません、発振を止めるのはカソード電圧が10V近くまで上げないと止まらないのです。
言い換えれば少しでも増幅すると 発振するということになります。 これは明らかに異常で 欠陥品です。



発振の原因は部品配置の不適切と それに伴う配線の引き回しが悪かったようです。 メーカー製ラジオを修理する場合はこのような心配はまず 必要ありません。
素人が作ったラジオは常識外のことがしてあるので 注意が必要です。

電極や部品を接続する配線が電気的に間違ったわけではありません、配線図通り几帳面に配線されていました。
しかし 空間的に不適切な引き回しなっていたからです。
高周波増幅回路の入力と 出力の配線が近接しすぎていたのです。
下図のように変更して 正常に動作するようになりました。
図中 検波回路のグリッド回路の配線(うす紫色)の変更です。
これで 高周波の発振はピタリと止まりました。 配線は回路図そのままに接続すれば良いと考えている人が多いようですが、相互の干渉を避け 最短距離で行う必要があります。
 スーパー用のバリコンと 高1用のバリコンが同じだと思っている人が多いと思いますが、実は違うのです。
スーパー用の2連バリコンはセクション間のシールドは 扱う周波数が違うので 厳密ではありません。
しかし 高1用は 遮蔽板をセクション間に立てて 相互結合を防止しているのです。
配線も当然 接近してはいけません、これが常識なのです。


修復前の様子


わざわざ シールド板があるのに配線が接近するなどもってのほかです。
これでは6BA6の増幅が出来るわけがないのです。
修復後の様子

RF増幅回路(白色)と検波回路(うす紫色)に接続されたバリコンからのリード線は
オリジナル状態だとアンテナコイル(RF)の近くの穴から引き込まれていたが、
これをバリコンの左右に分割した。







今回修復した回路図

 今回最終的に 変更した回路です。
5極管による低周波2段は増幅率が高すぎるので、6BA6は3極管結合としました。

 結合コンデンサーは0.047が使われているが 普通は0.01くらいが適しています。
費用が勿体無いので 抵抗 コンデンサーは無理のない範囲で流用しています。
決して 最適値ではありません、ご注意ください。
また図面に 間違いが有るかもしれません、このままで作らないように。




キャビネットの底板に貼られていた オリジナルの回路図。
再生式のグリッド検波です。



なお新しいシャーシも元のキャビネットの固定ネジの穴にぴったりに組み込まれています。
このラジオを作った方は 相当電気的に詳しく また工作的にも見事な作業がしてあります。
惜しむらくは 図書などの回路を無批判に引き写して 高感度と思い込んで 設計し 組み立てたことでしょう。
高1受信機は 意外と配置が 難しいです。







2015年9月21日
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中津

真空管ラジオ



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